この大空に、翼をひろげて。(アプリ版)をプレイした

休職中、職場と連絡を取っては体調を崩し、宝塚観劇に行っては体調崩し、実家で家事をすれば体調を崩していた僕は、一人暮らしの家に戻り、しかし、やりたいこともなく、そんな状態で空腹になることもなく(なるが、何も食べたくない)、眠気もなく、地獄のように過ごしていた。

友達に電話をすれば出てくれるが、向こうも社会人だ。毎日毎日たよっていられない。

僕もいっぱしの大人なら、一人で時間くらい潰せねばならぬ。そして、心を上向けられるようなものに取り組まねば。

使命感。使命感に燃えていた。

この使命感というのがなかなか厄介で、前記事でも書いたがこれもしんどさの元だ。

しかし、僕とこの「この大空に、翼をひろげて。」というゲームには長い間確執があった。

 

時間があれば、しよう。

 

そう思ってインストールして、数か月が経っていた。

他にも時間潰しに面白いと聞くゲームは買い揃えていたが、まずはこいつの相手をせねばならぬのではないかと感じていた。

まずこいつと出会ったのだって、ストーリーの良いエロゲを探していたからだ。そのうちの一つ、「見上げてごらん、夜空の星を」は正直ぱっと手が出せる値段ではなかった。エロゲのエロ部分は必要じゃないし、話を読みたいだけなのに万近くは抵抗があった。

同じ制作会社のこいつは、アプリで無料でプレイできるときた。

インストールしないわけがない。でも、時間があるときに。

正直、めちゃくちゃやりたい!って気持ちではなかった。なんかしらの時間潰しにしたかっただけ。だから後回しにしていたのだが。

今、僕はめちゃくちゃ暇だった。映画を見ても気分が悪くなる程度には画面、音に影響されやすく、テレビゲームもしたくなかった。

本を読めば文章はページに並ばず、僕を混乱させるだけのものになってしまった。

その点、ノベルゲームは(こんなアプリでやるだけに)一つ一つの文章が短い。

それでも繰り返し読まねば、僕の頭には入ってこなかったが。

人生でこんな暇になること、今後もあるだろう。だが、今、やろう。

実家には何も持って帰ってなくて暇だった。手元にあるのはこいつだけだった。

 

そんな訳で、僕はこいつをプレイしたのです。

畳む。ネタバレ有。

 オープニングまで、とりあえずやろうと思った。

したらオープニングまでが長い長い!

もしかしてアプリ版だし、飛ばされてるのでは?と疑うレベルでオープニングが長かった。

僕はこういうの、あらすじで「グライダーを作って飛ぶ」と見てしまったらそこに至るまでの経緯は結構どうでもいいと思ってしまうタイプだ。

メインヒロイン、小鳥が入部するまでのもどかしさは、いらいらに変化していた。

早く入部しろよ!はじまんねーだろ!と本気でキレかけていた。

それはメインヒロインではなく、天音ちゃんの方が好きになっていたからだ!

超留年し、一人でグライダーを作っていた天音ちゃん。その理由は彼女の友人・イスカとの約束を果たすため。でも、今年の夏で天音ちゃんも引退を余儀なくされてしまう。

そんなの天音ちゃんを手伝いたいにきまってるだろ!早くやらせろよおおお!と読み進めていくと、オープニング。

そこからヒロイン分岐。

オープニングではメインの小鳥、天音、幼馴染のあげはと主に行動していたが、分岐ではふたごも選べる。

 

双子は「アサ」と「ヨル」。なんて安直なの……と思ったが、僕はメインヒロインと気に入ったヒロインは最後に選ぶ派なので双子ルートへ。

双子は、双子なのに全然違っていた。一人は平凡で、一人は天才だった。見た目は一緒なのに、見られ方も考え方も違う。彼女たちもぐうライダーへの想いと、悩みを抱えていた。

僕はこの双子ならヨルの方が好きだ。天才天才といわれていたがそのような描写は少ない。小鳥ルートの際にそれが発揮されたくらい。

ヨルは……何故だろう。二人のうちひとりと言われたら、きっと何度でもヨルを選んでしまう。けれど、理由は分からない。彼女の分かりやすい強さに、僕は惹かれたのかも。

アサはアサで強い。しかし、その強さは見えにくい。彼女は表面上、取り繕っているから。彼女の本心まで覗きたいと僕は思えなかった。

言葉は悪くても全力でぶつかってくるヨルの方が、僕には魅力に見えた。

ヨルは非常に素直じゃない。姉の手伝いでグライダーを作っていると言って認めなかったが、彼女のルート、彼女の最後の言葉に、全てが詰まっていたように思う。

素直じゃなかった彼女は、空を飛び、自分をきちんと認めることができたのだと思う。

双子のルートは病院の受診待ちにぼちぼち進めていたのだが、思わず泣いてしまった。

久しぶりに心が動かされた。自分の悩み以外で流す涙はこんなに気持ちが違うんだ、と僕はこのゲームにのめり込んでしまった訳だ。

ただ、この双子でモーニンググローリーを飛んでも、主人公も小鳥も天音ちゃんも報われねーなーと思った。

 

続いて、あげは。

主人公は過去にあげはに告白したことがあり……幼馴染ルートとしてはわかりやすい。今は何もなかったかのようにお互い過ごしている、と。

しかし付き合い始めるとすごかった。あげはが主人公を好きと認めない。態度でわかるのに、部活に来なくなる。しかし、彼女のただのわかままではなく、部に貢献するためにそう動いている……といわれても、ものすごく気になる。動機とか、気持ちとか。

そして明かされる、「二度と、主人公と、仲間の居場所を失いたくない気持ち」。

僕も秘密基地を作った経験がある。むしろ、全くない人の方が少ないのではないかな。

その秘密基地も、いつの間にか行かなくなって、下の学年に受け継がれたりして。なくなって当たり前というか、そんなずっと大切にするものじゃないと思っていたから、あげはには感情移入できなかった。

こういう奴がもし近くにいて、僕は絶対無理だと思うけど、もしウマがあったら死ぬほど楽しいんだろうなとは思った。

けどこの姉妹は積極的すぎて僕は好きではないかな。

 

続いて、小鳥。

小鳥はメインなので最後にしようと思ったら、天音ちゃんルートに小鳥の話が含まれるっておいおい。それはそれでネタバレなんですがっ!

やむなく小鳥を前倒しに。天音ちゃんの気持ちを一番にしたかったがために……。

小鳥の家族の話や、体のこと等。メインヒロインらしいこれといって特徴のない、王道オブ王道の話だった。

だが、だからこそ、涙が止まらなかった。

ソアリング部に残された、天音ちゃん。トビウオ荘に遺された、イスカの想い。両方を繋いだ小鳥は、色々な人に支えられ、大空へと飛び立つ。小鳥じゃないと、この話は出来なかったんだろうな。小鳥だから、できたんだろうな。

初めは「入部させてほしい」とすら言えなかった小鳥が、「飛びたい」といい、実際飛ぶことが出来た。良かった。本当に良かった……。

高校生は、大人から見たらまだ子供で、保護の対象で、大事にされている。けれど、高校生には自分の考えもきっちりあって……。衝突するよね。

僕も未だに大人の意見に黙らされたりするもの。そういう点で、小鳥は自分を貫けて偉いなと思いました。

自分の行動で親を変えられる、ちゃんと見守ってくれる親……。羨ましい。

日々進化してゆく小鳥に涙が止まらない。

 

最後。天音ちゃん。

今までどれだけ感動しようとも、イスカの行方が気になってどうにも気が晴れなかった部分がようやく解明される。

それだけで期待が膨らむ。彼女としての天音ちゃんは全然期待してなかったのに、なんか、なんだろう。一番印象に残ったかな……。

天才でバカな彼女との日常の描き方は良かったと思う。それだけに、グライダーが出来て、飛んで、モーニンググローリーを待つ日々に不安が募った。

僕は今までのルートを通して、イスカは事故で亡くなっている、実は飛岡の娘だったとかなんだと思っていた(苗字が全然出てこないし、飛岡のこだわり方も異常だったし)。

しかし、それどころではなかったね。イスカは生きているけれど、天音ちゃんにとって最も残酷な真実を突き付けられて。

他のルートでは絶対飛ばなかった天音ちゃんが、飛んで。

やっと彼女の世界は色付き、光を取り戻した。

メインヒロインは天音ちゃんやったんや。天音ちゃんの時は動き出した、主人公と一緒に……。

イスカと同じ空は見れなかったけど、同じ世界にたどり着けた二人へ拍手を。

止まっていた時間を取り戻すために彼女たちは……どうするのかなあ。

 

 

 

とりあえず僕は、職場から電話がかかってきたので、いよいよ退職の日を決め、最後の責任を取ってこようとおもいます。

あと、ころげてのルート埋めもね。